さいこぱす

首を絞められ、椅子に座らされている。身動きはとれない。これからどんなことが起こるのか、不安が募る。
目の前には鏡があった。
鏡の向こうには、刃物を持った女性が微笑んでいる。彼女は、こうしたらもっと美しくなるというようなことを呟きながら、躊躇なく刃物を振るい始めた。
まわりには、さっき僕のものであったはずの破片が無造作に散らばっている。ザクッ、ザクッ、とリズムよく鳴り響く刃物の音が、不気味に響いている。
まだ意識があるから、致命傷は与えられていないらしい。彼女の芸術を楽しんでいるような顔を見ながら、早く終わってくれという思いと死にたくないという思いがせめぎあっている。
しばらくし、彼女は別の刃物を持ち出した。これが仕上げだと言わんばかりに気合いが入っている。
僕は、生命の終わりを確信した。その刃物が、機械音を立てながら近付いてきたからだ。しかし結局、それは恐怖を与えるためだけのものだったらしい。
彼女は、その刃物をすぐにしまうと僕の破片をほうきで掃きはじめた。そして鏡を持ち、合わせ鏡のようにして後頭部の辺りを僕に見せると、これぐらいでいいですか?などと聞いてきた。
僕は言った。「前髪と襟足だけもうちょっと切ってください」